Nikon D810

D810 + MB-D12 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED 

2014年9月作成

●マイナーチェンジを超えるモデルチェンジ
D800発売から約2年半。D800の後継機が発売されるという噂が出てから、発表までは静観していました。
が、正式に発表され、内容をよく見ると、ただのマイナーチェンジの域を超える内容に驚きました。

 ・常用ISO設定範囲:ISO64~12800 (D800はISO100~6400) ※常用感度ISO64は、デジタル一眼レフ初
 ・シャッターユニットやミラーバランサを新設計とし、シャッター音とミラーショックを軽減
 ・電子先幕シャッター搭載
 ・ブリップの形状変更
 ・液晶ディスプレイがRGBW配列の122.9万ドットに (D800:92万ドット)
 ・ファインダ内表示を液晶から有機ELへ
 ・ピクチャーコントロールに新たに「フラット」を追加、「明瞭度」の設定可能
 ・AWBの精度向上
 ・EXPEED4搭載
 ・内蔵マイクのステレオ化、1080/60p動画撮影対応
 etc...

通常、マイナーチェンジレベルでは、シャッターユニットやミラー部の変更はないですし、ボディ形状の変更も細かい部分のみ必要最低限。今回はブリップの形状まで変えてきています。
そして、AWBの精度向上。これは撮って出しでは重要。
DX機やNikon 1シリーズでローパスレス化は先行し、そこで実績を積んで、満を持してD810でローパスレス化を果たしました。(D800Eはローパスフィルタの効果を打ち消していたので、ローパスレスではない)

私事ですが、子供が出来て、子供の写真撮影が増えた今、RAW現像で1枚1枚やっていると、とてつもなく時間がかかります。日々の記録写真は、JPG撮って出しが重要と思うようになってきました。
D800で大きな不満があったわけではないけど、写真家田中希美男氏のブログを見て、AWBの小精度向上は一目瞭然
そう、まさに、今までのNikon機、AWBで緑を撮ると、こんなふうに転ぶんです。
D300の時代からはだいぶ向上したD800とは言え、こういう傾向にあったことは否めず、いつしかD800ではRAW撮影が基本になりました。で、RAW現像が膨大な量になるのです。

D810の初値がD800Eよりも若干安く、D800も結構高値で売れることから、D800を手放して、D810を導入することに決めました。
やっぱりデジものは最新に限りますね。何だか、フィルムカメラよりカネがかかっている気がしますが(笑


ぱっと見分からないD800との変化点は、D810のロゴが、D800ほど斜めにはなっていないこと。
測光切り替えダイヤルがなくなり、従来BKTボタンが合った場所へ移設。
代わりにBKTボタンは、フラッシュボタンの上に移動しました。
これまたわかりづらいですが、ペンタ部の出っ張りが、D800よりわずかに少なくなっています。
PCレンズの干渉対策のようですが、一部PCレンズは、ダイヤルを小型のものに交換しないと干渉するようです。
ホットシューのカバーは、何故か付属しなくなりましたが、元々使っていなかったので関係なし。
グリップの形状が、中心部に盛り上がりが出来て、握りやすくなりました。
重いレンズを装着した際に、握りやすさにより安定感が増したように思います。
メモリカードのカバーにラバーが付くようになりました。
端子カバーも、端子ごとに独立し開くようになりました。
D800は、1つのカバーでガバっと開いていただけに、外部マイクやヘッドフォン取り付け時、スマートに。
リアも細部が変更されています。
測光切り替えダイヤルがなくなり、代わりにiボタンが付きました。
設定の切り替えが簡単にできるようになり、便利になりました。
画像プレビュー時、拡大表示での精細さも改善し、100%表示もわかりやすくなりました。
ファインダは、光学系のコーティング改良で見やすくなったとのこと。
言われてみれば見やすくなったような気もしますが、言われなければD800とそう変わらないように思います。
気のせいかもしれませんが、わずかにピントの山も見やすくなったような?
ファインダ下の表示が、液晶から有機ELに変更され、コントラストが改善され、見やすくなったとのこと。

※右の写真はXperia Z2の内蔵カメラによる撮影です。

よくある比較表です。この比較表を見る限り、数値に表れる部分では、大きな差はありませんが、地味な改良改善を積み重ねているのが伺えます。。

D810 D800/D800E
イメージセンサ解像度 3635万画素 36.3メガピクセル
ローパスフィルタ 非搭載 D800:搭載
D800E:搭載(ローパス効果を打ち消している)
画像処理エンジン EXPEED4 EXPEED3
基本感度 ISO64-12800 ISO100-6400
拡張感度 ISO32-51200 ISO50-25600
連写速度 5コマ/秒 4コマ/秒
7コマ/秒(DXクロップ時) 6コマ/秒(DXクロップ時)
測光方式 91kピクセルRGB 91kピクセルRGB
グループエリアAF 対応 非対応
液晶モニタ 3.2型/122.9万ドット(RGBW) 3.2型/92万ドット(RGB)
モニタカラーカスタマイズ 対応 非対応
モニタ2点拡大 対応 非対応
RAWサイズS 対応 非対応
レリーズラグ 0.052秒 0.042秒
シャッター耐久 20万回 20万回
電子先幕シャッター 対応 非対応
動画 1080/60p 1080/30p
動画ハイライト表示 対応 非対応
内蔵マイク ステレオ モノラル
録音帯域設定 広帯域/音声帯域 非対応
微速度撮影露出平滑化 対応 非対応
記録媒体 CF(TYPE I/UDMA対応) CF(TYPE I/UDMA対応)
SD/SDHC/SDXC(UHS-I対応) SD/SDHC/SDXC(UHS-I対応)
撮影可能コマ数 約1200枚(EN-EL15使用時) 約900枚(EN-EL15使用時)
質量(本体のみ) 880g 900g


D800とD810の比較が気になる方も多いでしょうし、D810そのものの出来もどうなのか、気になる方も多いでしょう。
作例その他D810関連の話題は、は、ブログからどうぞ。
D800との綿密な比較は、他のサイトにも散々ありますので、ここは個人的な感想や所見を書いていこうと思います。

●オートフォーカス
AFモジュール自体は、D800から変わらないマルチCAM3500FXですが、アルゴリズムが改善され、新たに追加されたグループエリアAF、が動きモノの撮影に非常に便利。ダイナミック9点AFより使いやすい。
AF速度自体は、D800から大きく変わる印象はないが、オートエリアAF時の被写体認識速度が改善されたような気がします。
ただ、この51点AF、D3/D300時代からの改良を重ねたもので、そろそろもう少し広範囲にAFエリアを拡大し、クロスセンサも増やした新世代センサも欲しいところ。

●画質
ローパスレス化による恩恵は、正直D800と比較して大きな違いはないと言えます。
とはいえ、細かく見てみると、風景撮影時など木の葉の細かい描写、物体表面の質感がD800よりわずかに改善されています。これは比べなければ、D800でも十分高画質と言うこともできます。
また、気が付いた点として、何気に撮っていても、D800では微細な手ブレによる解像感低下(等倍で初めて判るレベルの話)が時折感じられたのが、D810では歩留りが上がったように思います。
これはシャッターユニットやミラーユニットの振動低減による効果なのか、ローパスレス化によるものなのかはわかりませんが、この微細なブレの発生が少ないということは、そのまま解像感の向上に直結します。

●新ピクチャーコントロール
フラットの追加と明瞭度の調整が可能になりました。明瞭度のコントロールは、正直カメラの設定で決めるのは難しいので、どちらかと言うとRAW現像で調整した方が良いでしょう。
D800のピクチャーコントロールと比較して、風景やビビッドは明瞭度+1がデフォルトになっているのと、スタンダードでもD800より濃い目の色が出てくるように思います。
この辺りは、このクラスのユーザーなら、自分の好みに合わせて追い込めばよく、色の濃さも調整すればよいでしょう。
WBと併せて、従来より細かい単位で調整できるようになったのも良い点です。

●高感度
特にD800から改善されたのが高感度。JPGでのノイズ感がかなり軽減されました。
RAW撮影の場合、RAW現像時の処理で、D800でもかなりカラーノイズは改善されますが、一方でJPGではカラーノイズがISO6400あたりから結構のっていました。
D810では、素の性能として1段程度D800より改善されていますが、それ以上にJPGでのカラーノイズが低減されました。
感覚的には、RAW現像でノイズリダクションを「高画質2013」に設定したものにかなり近いノイズ感です。
EXPEED4の恩恵でしょうね。
とはいえ、ISO12800辺りの高感度となると、RAW現像でノイズ処理した方が良好な結果が得られます。

●シャッター
D800と比べていちばん変わったと思う部分。
D800では、派手な「カシャッ!」と言うシャッター音で、Qモードにしても「カッシャン!」と間延びする割に、音量そのものは大して変わらなかった。PENTAX使いの友人に、D800のQモードはK-3のノーマルの音よりうるさいね、と言われたくらい(笑)
ところがD810では、「クシャッ」という大抑えられた音(文字で表現するのは難しい…)になり、Qモードでは「クシュ」と言う、ただ音が間延びしただけで音量はほとんど変わらなかったD800と違い、明らかに静かになります。ミラーの戻りがバネだったD800に対し、モーター駆動化したD810では、モーターによる制御で音を抑えられるようになったのでしょうね。
ポートレート撮影などで、撮られている感のある音のD800を好む人もいるかもしれませんが、多くの人にとっては、静音化は歓迎でしょう

●連写
FX時、D800では秒4コマのところ、D810では秒5コマになったが、正直なところ、FXではこの連写速度のわずかな向上はあまり体感できない。
せっかくマイナーチェンジしEXPEED4になったのだから、せめて秒6コマは欲しかった。とはいえ、そうなると1.5倍速くなることになり、EXPEED4化による性能向上は3割程度のようなので、やはり処理的な問題もあるのでしょうね。

DX時、MB-D12に単三電池またはD4用EN-EL18(a)バッテリを使うことで、秒7コマ(D800は秒6コマ)になるのは、非常に便利。バッファを考慮すると、D7100を超える高速連写が可能。手持ちのD300の秒8コマにわずかに及ばないが、D300も割と早くバッファがなくなるのに対し、元々3600万画素を受け止めるバッファをもつD810は、DXクロップにより1500万画素になるので、余裕があるという事。

レリーズラグは、D800の0.042秒から、D810では0.052秒と悪化。ミラーやシャッターの清音化に伴う唯一のデメリットです。確かに、動きモノやレスポンスが求められる撮影で、今までの感覚よりほんのわずかに遅い気はします。これは富士総合火力演習で、戦車の発砲炎を撮る際に、少し感覚的なズレを感じました。
Nikon自身が、D810は動きモノを撮るカメラとあまり考えていないようで、D4系に敵わないです。とはいえ、動きモノを撮れないカメラでは決してなく、あくまでD4系に比べると劣るというだけのことで、D7100やD610以上には撮れるはずです。

●動画
一般のビデオカメラにはない、大きなセンサによる画質とボケ味を楽しめるのが、一眼レフ動画の醍醐味。
D810では、4kではなくフルHDのままですが、これまでの30pまでから60pまで対応となり、動画の滑らかさが向上。画質自体も向上しています。
内蔵マイクがステレオ化されたのがうれしいポイントで、ステレオ収録のために外部マイクを出さなくて済むので、さっと撮りたい時によいです。
ただし、動画時のAFは相変わらず行ったり来たりを繰り返すため、大きく動く被写体の撮影は難しいです

●残念なポイント
別売りの無線LANユニットが、今回も高価で仰々しいUT-1WK(UT-1+WT-5)にしか対応しないこと。これは明らかにプロ向けの価格。
プロが使うモデルでもあるD810だけど、多くはハイアマチュアが使うはずで、スマホがコンパクトカメラを駆逐している時代、もう少し安価に無線LANが使えてもよいのではと思う。
CFカード、SDカードスロットも特に変更はなく、せめてUHS-II対応してほしかった。

●D800/D800Eユーザーは買い替えるべきか?
難しい所です。
今回私が買い換えた理由が、子供の写真の撮影枚数があまりに多く、とてもRAW現像が追い付かないので、撮って出しJPGの画質が良くなったD810に期待したから。
D800のJPGも悪くはないが、比べてしまうとRAW現像より劣る、昔より安定したとはいえ、まだ転びやすいAWBもあって、結局RAW撮りが多かったのです。
もし、RAW現像がメインである、Capture NX2を主に使用する、と言うのであれば、D800とD810の差は小さいと言えます。
JPG撮りなら、確実にD810は良くなっています。色乗り、ノイズ処理など。まだ下取り価格も高いD800系なら、下取り+十数万円でD810が手に入ります。
JPG撮りがメインなら、買い替える価値は十分あります。
気にする人は気にする製造国、D800は日本製ですが、D810はタイ製です。品質差はないと思います。同じくタイ製のD300は、購入から1度の不具合もありませんし、大雨や吹雪といった、過酷な状況での撮影にもよく耐えています。
今の水準で見ても、D800は決して古くはありません。が、D810はD800からは、確実に進化しています。じっくりお考えください。





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